
works
title
dyslexia #003
series
year
2025
size
W410mm × H410mm(S6)
media
Mixed Media on panel
artist
HYRE
statement
本シリーズは、作者自身の幼少期からの体験に深く根ざしている。ディスレクシアに近い症状を抱え、「読む」「書く」「話す」といった言語行為に継続的な困難を感じてきた。
その経験は単なる読み書きの問題にとどまらず、言語をどのように知覚し、理解するかという認知のあり方そのものに関わっている。
新聞や書籍の活字は、にじみや重なりによって輪郭が曖昧になり、意味の把握を妨げることがある。
さらに、紙面の白地が光を反射することで強いコントラストが生じ、視覚的なチラつきや眩しさを引き起こす。
このような状態では、文字と背景の関係が安定せず、ゲシュタルト心理学でいう「図と地」の関係が揺らぐことで、読むという行為そのものに負荷がかかる。
こうした現象は、言語が本来持つはずの「意味を伝えるための透明な媒体」としての機能を揺るがす。
文字はもはや単純に意味へと導くものではなく、光や視覚条件、知覚の揺らぎの中で、常に不安定な状態に置かれる。
言い換えれば、「読む」という行為は直線的な理解のプロセスではなく、視覚と意味のあいだを行き来する、動的な経験として立ち現れる。
本シリーズは、このような「読めなさ」の感覚を出発点としながら、言語と知覚の関係を問い直す試みである。
個人的な体験に基づきながらも、それは同時に、情報過多の現代において揺らぎつつある「理解すること」の前提そのものに接続している。
文字を読むという行為がいかに不確かな条件の上に成り立っているのかを可視化することで、本作は言語と認識の関係に新たな視点を提示している。
message
以下は、一般の方でも分かりやすい内容で記載しています。
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このシリーズのきっかけには、作者が子どものころから抱えてきた「読み書きや話すことへの苦手意識」があります。
本や新聞を読むときに、文字がにじんだり重なったりして、なかなか内容が頭に入ってこない。その不思議な感覚をもとに作品を作っています。
絵の中では、コラージュや書道、絵の具のしぶき(ドリッピング)、型を使ったステンシルなどを組み合わせ、何層にも重なった文字を描いています。
わざと読みづらくすることで、「読むことの難しさ」を目で見て感じられるようにしているのです。
この表現は、個人の体験を超えて、今の社会にもつながっています。
インターネットや情報の多さで「きちんと読む」「理解する」力が弱まってきているとよく言われます。
作品は、そうした現代の状況を反映しながら、「理解できないとはどういうことか?」という問いを投げかけています。
つまり、文字や言葉がただの道具ではなく、私たちの生き方や感じ方にどんな影響を与えているのかを考えるきっかけを与えてくれるのです。
