statement
本シリーズは、デジタル環境における承認のインターフェースとして機能する「いいね(ハート)」という記号を批評的対象とし、価値生成の構造そのものを再帰的に問い直す試みである。
SNSにおける「いいね」やコメントは、非物質的でありながら主体の存在認識に強く作用し、しばしば計量不可能な「重量」として経験される。本シリーズは、この不可視の質量に対する思考実験から出発し、承認の数値化がいかにして価値へと転換されるのかという問題系に介入する。
制作プロセスにおいては、既存の絵画、報道イメージ、SNS上の視覚断片、各種アイコンといった異なるレジームに属するイメージ群をデジタル上で再構成し、ジクレープリントによって物質化する。さらに透明ウレタン塗料と絵画的介入を重ねることで、デジタル/アナログ、イメージ/オブジェクトの境界を撹乱し、視覚表象の存在論的位相を多層化する。
とりわけ名画を扱う作品群においては、美術史における価値形成の制度的側面が前景化される。すなわち、作品の価値は市場価格や制度的承認、批評言説や研究の蓄積といった反復的な言及の総体によって増幅されてきた。この構造は、SNSにおける「いいね」数やエンゲージメント指標と相同的であり、「数」が価値を担保する装置として機能する点において連続性を持つ。
本シリーズは、この歴史的連関を可視化することで、「いいね」を単なる軽量な承認単位から、「愛」や「生」の強度をめぐる記号へと再配置する。同時に、それが内包する承認経済の暴力性と、主体の欲望との共犯関係を露呈させる。
さらに、哲学的テクストの断片的導入により、記号は固定的意味を回避し、文脈的に変容し続ける。「いいね」はここで、消費的リアクションではなく、言語・歴史・イメージが交錯する場における批評的媒介として機能する。
「LIFE POINT」は、デジタル時代における価値と存在の計量可能性をめぐる問題系に対し、美術史的連続性と同時代的状況を横断する視座から応答するものである。
